「お!なぁ、おい、こんなの拾っちまったぜ!」
「あー、そうかい。よかったな」

何でもかんでもよく拾うヤツだと思った。



コイツ――ビクトールという今じゃまぁ、腐れ縁みたいなヤツと出会ったのは、あのトランの動乱が始まる以前のことだった。
俺たちはすでに一人の女性に導かれて、後にあの動乱の火着けともなる組織に属していた。
他でもないその女性によって引き合わされたヤツに対する最初の印象は『胡散臭いヤツ』という、今から考えても、何て的を射た感想なんだろうとしみじみ思ってしまうようなものだった。
そして、そんな『胡散臭いヤツ』には、奇行とも言えそうなおかしな癖があった。

「オッ!おいおい!これ見てみろよ。もって帰ろうぜ!」
「お前なぁ、何でもかんでも持って帰るなよ……」

道端に落ちてるものを、むやみやたらと拾うんじゃありません!なんて教えは受けてこなかったようだ。

「毒消し草!ラッキ~☆」
「…まぁ、ラッキーではあるが…」

誰かの落し物かもしれない、なんて考えは生憎、コイツの頭には浮かばないようだったし、例えそうであったとしても、それこそ『ラッキ~☆』で済ませるんだろうな。そしてもちろんヤツには悪気なんてものは欠片もない。(故に罪悪感とも無縁だ)

落し物は、最初に見つけて拾った人のもの。
そんな考えでも持っているのか、とにかく拾った物をすぐ持って帰ってくることに抵抗がないヤツだった。
それはともすれば懐の広さにも繋がるのだろう。
なんでもかんでも懐に入れることが出来る。俺には決して出来ない芸当だ。それが良いか悪いかはまた別の話だが。
コイツのそんな癖が、とんでもない事態へと続くキッカケになったこともある。
そう、他でもない彼――『トランの英雄』を拾ってきたことだ。

寄りによって拾ってくるか、普通!?

当時はまだ若かった俺には到底受け入れることが出来なかった。その結果の良し悪しはまた別の話にしておくとして。
行き場のなくなった『彼』を、ビクトールは迷うことなく当時の俺たちの住処へと、拾って持って帰ってきた。
その後紆余曲折を経て、結果としてやはりあの時のビクトールの判断は間違っていなかったと思う。
もっとも、あいつの場合は、判断とかそういったことじゃなく、いつもの習慣でうっかり拾ってきただけかもしれないのだが。(そしてヤツはそのことを決して認めはしないだろうが)



あれから数年。
腐れ縁という言葉にもすっかり慣れ、とある事情で傭兵をしていた俺は、数年前と同じセリフを口にしていた。

寄りによって拾ってくるか、普通!?

うっかり反逆者扱いされそうになっていた少年二人を、拾って持って帰ってきたヤツ相手に呟いたセリフは、呆れと諦めが込められていた。

「まぁ、そう言うなって!ほら、こいつらを川で拾っちまったのが、縁ってものさ」
「……それも見つけたのはお前だったな」

そして歴史は再び流れを変える。
いや、そもそも、コイツが何でもかんでも拾ってくることすらも、歴史の流れの一つ……つまりは定められた運命ってやつなのかもしれない。

「おい!なぁ、フリック!こんなもの拾っちまったぜ!」
「あー、そうかい。よかったな」

なんにしろ、退屈って言葉とは無縁だ。


 
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