ドラゴンさえも難なく倒してしまう力。長剣を我が腕のように扱い、魔法も一通りこなせてしまう。
怖いものなど、ないだろう。
そういわれた。
怖いもの。
それは英雄にもある。

目。
ヒトの目が怖かった。

幼い頃から、何一つ苦労することなくヒトより優れた結果を出せた。
周りの人間は俺を異質なものとして認識した。
彼らの目は一様に、奇異と異物に対する警戒心、理解できないものにむける恐怖、排他的な視線。視線。視線。
皮膚を刺し、肉を貫き、骨を傷つけるようなその視線が、俺は怖かった。
最も好意的なものですら、興味以上のものではなく。

コンプレックス?
劣等意識など俺にはない。ヒトより劣っているところなどない。そういう意識は、そう、例えば宝条のような男が抱くものだ。
決して己が望む高みには届かない哀れな男。どれほど努力しようとも結果がついてこない。才能など一欠けらもない愚か者。ガスト博士の影を追いかける分だけ惨めになっていく。
劣等意識など、あの男にこそ相応しい言葉だ。
そのくせあいつは俺をあの目でみる。
まるで実験動物を見るように。興味などというものは、最も下種な感情の一つだ。

俺が劣っているわけではない。異質だとしても、それは俺がヒトより劣っているからではなく。そう、優れているからなのだ。
ヒトは決して神を理解は出来ない。恐れ慄き、自分とは違う異質なものとして、その恩恵を受けようと畏れ敬うのだ。
ヒトが俺に向けるのも、それと同じではないのか。

俺は決してヒトの目を見ない。
歩くたびにあちこちから視線が向けられる。様々な視線が。俺はそれらを無視して歩く。
まっすぐ前だけを向いて、誇り高く頭を上げて。
周りの目など、道端の石と同じ程度に思って。ただ顔についている色とりどりの石だと思う。石が俺を見ることは出来ない。たとえ見ているように見えても、俺というものを認識することはムリなのだ。
誰も俺のことを理解など出来ない。俺はヤツらとは違う、生き物なのだから。より高等で、優れたイキモノだ。
俺は決してヒトの目を見ない。そこにあるのはただの石。

ヒトの目が怖かった。刺さる視線が痛かった。
けれどそれは過去の話。
今の俺にはただの石にしか見えない。

怖くなどない。
痛くなどない。
助けてくれと、



誰かに縋ることなど、ありえないのだ。



-END-
 
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